昭和期の白老町で盛んに生産された木彫り熊にスポットを当てた「白老、北海道の木彫り熊を巡る考察展」が22日、仙台藩白老元陣屋資料館で開幕した。白老のほか、北海道で木彫り熊作りのルーツとされる渡島管内八雲町や旭川市の彫り師が手掛けた作品約220点を展示し、民芸品にとどまらない文化的価値の高さを紹介。道内で出土した熊の意匠付きの土器やアイヌ民族の民具も紹介し、先史時代から続く熊と人の関わりが来場者の関心を引いている。
考察展は、自然や文化など地域資源を活用した芸術文化活動「ウイマム文化芸術プロジェクト」(文化庁、実行委員会主催)の一環。同資料館の企画展に位置付けて9月22日まで催す。
会場では、町内の民芸品店や八雲町木彫り熊資料館、各地のコレクターなどから借り受けた「這(は)い熊」「ほえ熊」「座り熊」「サケくわえ熊」など、昭和初期から平成にかけて作られた木彫り熊を展示。地元白老や八雲町で活躍した名工の彫り師らが手掛けた芸術性の高い作品もある。
また、苫小牧市のタプコプ遺跡から出土した土器、伊達市の有珠モシリ遺跡で見つかった骨製スプーンなど、熊の装飾を施した続縄文・オホーツク文化期の遺物を苫小牧市美術博物館と北海道博物館から借り受けて展示。アイヌ民族が儀礼で使用した熊の意匠付きの祭具イクパスイや冠サパンペなど、国立アイヌ民族博物館の所蔵品も並べ、木彫り熊の系譜のみならず、大昔から続く熊と人の文化的な関わりも伝えている。
会場へ足を運んだ白老町緑丘の小林武さん(85)は「木彫り熊の作者、地域によって作風が異なる点が面白い」と話し、興味深げに作品を眺めていた。
白老での木彫り熊の生産販売は戦時中の衰退期を経て、戦後の高度成長時代に飛躍的に発展。観光ブームの1960年代から70年代にかけては作品を扱う民芸品店が軒を連ね、数多くの職人が活躍した。同資料館の武永真館長は「木彫り熊の芸術性や文化財的価値が見直されれば」とし、来場を呼び掛けている。
関連行事として9月12日にシルクスクリーンのアーティスト集団・シルキオプロジェクトの協力で「熊のプリント体験」(午後2~4時)を企画。最終日の同22日には、美術評論家中村一典さん(札幌)らのギャラリートーク(午後2時半~4時)を行う。
入館料は一般300円、小中学生150円、町民無料。開催時間は午前9時半から午後4時半。休館は24日と31日、9月14日。問い合わせは同資料館 電話0144(85)2666。

















