苫小牧市王子町で1945年5月創業の老舗印鑑店、弘文堂店主の秋山集一さん(70)は、自身が手掛けた遊び心満載のオリジナル印章をインターネット交流サイト(SNS)に公開し、静かな話題を集めている。斬新な発想と高いデザイン能力が必要なため受注販売には応じず、お世話になった人への贈り物として制作してきた。「はんこを使う楽しさを知ってもらうため、ライフワークとして続けていく」と話している。
制作のきっかけは約20年前、ネット販売の際に受けた「酒のさかなになるはんこを」との注文。抽象的なオーダーに「最初は戸惑ったが、面白いはんこを作ってみたくなった」。ふと、英国の庭園を俯瞰(ふかん)するイメージが頭に浮かび、伝統的な篆刻(てんこく)の字体を崩さずに左右対称の印章を完成させた。
デザインは仕事の合間や休みに直感でひらめくこともあれば、考案するのに1年を要したこともある。やがて「納期のある仕事では、時間内に発想が浮かぶ保証がない」と、オリジナル印章の受注は中止したという。
これまでに公開している印章は約20点。いずれも字そのものの意味や形を崩すことなく、贈る人が好きなものや職業としているものなどをデザインに取り入れた。例えば理髪業の人ならはさみ、お酒が好きな人にはワイングラスをあしらうなど工夫した。文字全体で冠をかぶった笑顔を表現するなど、全体の印象をイラスト化したようなデザインもある。
秋山さんは「デジタル化の進行は避けられないだろうが、アナログ文化そのものの『はんこ』の面白さを知ってもらい、手紙や色紙などに押す楽しさを広めたい」と語り、「じっくり時間をかけてでも満足のいく作品を手掛けていきたい」と力を込めた。
















