アイヌの声 施策に反映を 自民新総裁菅氏に期待と注文 白老

アイヌの声 施策に反映を 自民新総裁菅氏に期待と注文 白老
ウポポイ開業前日の7月11日、慰霊施設で北海道アイヌ協会関係者や鈴木直道知事と記念撮影する菅氏(左から2人目)

 政府のアイヌ政策推進会議座長を長く務めてきた菅義偉官房長官が14日、自民党の新総裁に選出され、16日召集の臨時国会で首相に指名されることを受け、北海道アイヌ協会などアイヌ民族の関係団体がアイヌ施策の推進に期待感を高めている。アイヌ家庭の生活向上や、白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)を核とした伝統文化の復興など諸課題が残る中で関係者は、これまで政策を後押ししてきた菅氏の手腕に注目している。

 菅氏は2012年の第2次安倍内閣発足で内閣官房長官に就任。これに伴ってアイヌ政策推進会議の座長に就き、アイヌを先住民族に位置付けたアイヌ政策推進法(昨年5月施行)や、白老町で今年7月にオープンしたアイヌ文化復興と発信拠点ウポポイの開設を後押ししてきた。

 アイヌ民族の理解者とされる菅氏が自民党新総裁に選ばれ、首相に就任することに対し、北海道アイヌ協会の大川勝理事長(新ひだか町)は「菅さんは、これまでになくアイヌ政策を進めてくれた政治家。いまだ一般家庭との格差が残るアイヌ家庭の生活向上、子どもの進学促進など、国のトップの立場でアイヌの声を反映した政策に頑張ってほしい」と期待を寄せる。

 白老アイヌ協会の山丸和幸理事長も菅氏の手腕に注目。地元で開業したウポポイが真にアイヌ文化の復興拠点となることを願い、「ウポポイの若い職員たちが伝統文化をきちんと継承できる環境を整えるのが重要。そのために菅さんと職員が車座になって話し合う場をつくってほしい」と求める。

 また、アイヌ施策推進法については、「法的に先住民族と位置付けられたものの、土地や資源の利用に関する先住権の施策は進んでいない」と指摘し、「アイヌ民族が文化伝承のために川でサケを捕獲する権利を認めるなど、緩やかな枠組みの中でも先住権を促してほしい」と言う。

 一方、平取アイヌ遺骨を考える会の木村二三夫共同代表(平取町)は、国内の大学などの科学者らが研究目的と称して、アイヌ墓地から不当に遺骨を持ち去った問題はいまだ清算されていないと強調。各大学で保管されていた遺骨を納めるウポポイの慰霊施設について「遺骨は国、大学の責任の下できっちりとふるさとの土地に返すべきだ。これは人権問題であり、総理大臣になる菅さんは返還を進めてほしい」と強く望む。

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