白老町のアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)で、小中高校の修学旅行生の受け入れがピークを迎えている。施設を管理運営するアイヌ民族文化財団によると、今年度の修学旅行で見学予約を寄せた学校数は29日現在、道内外714校に上り、その6割が9月と10月に日程を組んだ。ウポポイには連日のように施設見学の児童生徒が訪れ、学校側も先住民族や多文化共生を理解する教育効果に注目している。
■高校の多くが道外
好天に恵まれた29日、ウポポイは小中学校の修学旅行生でにぎわいを見せた。この日に訪れたのは道内外の11校1031人。国立アイヌ民族博物館の展示物や伝統家屋チセの見学、古式舞踊の鑑賞などを通じアイヌ文化を学んだ。
札幌市手稲西小の6年生42人も修学旅行でウポポイの各施設を見て回り、先住民族の伝統文化に触れた。新保詠子校長は「実際にチセの内部を見たり、古式舞踊を鑑賞したりすることで、授業で学ぶアイヌ民族の歴史や文化への理解がより深まる。その点でウポポイの教育効果は高い」と述べた。滋賀県の高校も修学旅行の日程にウポポイを組み入れ、施設を見学した男子生徒(17)は「アイヌ文化に触れる機会が無かったため、とても新鮮で感動した」と興奮気味に話した。
財団によると、修学旅行生の受け入れは8月下旬から始まり、9月と10月がピークという。見学予約を寄せた学校は29日までの累計で、小学校が281校(1万8759人)、中学校274校(2万3171人)、高校159校(2万5258人)。計714校・6万7188人に上った。
小中学校は道内が中心だが、高校の多くは道外。159校中120校が本州や九州などの高校で、内訳は中国四国地方が38校と最も多く、関西24校、関東22校、九州19校、中部16校、東北1校と続く。
■教育効果に注目
今年度の見学予約は来年3月まで入っているが、特に9月と10月に集中。この2カ月で計438校・3万6937人に上り、学校数で全体の60%、児童生徒数で55%を占めるという。財団は「春に修学旅行を計画していたものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で秋に延期した学校が多かったため」と集中の理由を説明する。
予約の申し込みはほぼ落ち着いた状況にあるが、財団は「コロナ禍の中で予想以上に予約が寄せられた」と手応えを抱く。文部科学省の新学習指導要領によって今年度から小学校、2021年度から中学校、22年度から高校でアイヌ民族の歴史文化を詳しく伝える授業が行われるため、「教育の場としてウポポイが注目され、修学旅行先に選ぶ学校が来年度以降も増えるだろう」と推測。「年間10万人程度の児童生徒が来場するようになるのでは」とみている。
一方、7月12日の開業以降のウポポイ来場者数は、27日までに10万149人となり、10万人を突破した。

















