開拓者やアイヌ民族を題材にした小説を手掛け、緻密な取材を続けてきた直木賞作家の乃南アサさんが14日、白老町の民族共生象徴空間「ウポポイ」を訪ねた。国立アイヌ民族博物館の展示物や体験交流ホールの伝統芸能、工房のアイヌ文様刺しゅう、チセ(伝統家屋)を見学した乃南さんは、ポロト湖畔の立地を称賛した上で、「これまでの取材の集大成に、ウポポイに触れることができ、感動している」と語った。
乃南さんは、開拓時代の帯広を舞台にした長編小説「チーム・オベリベリ」を今年6月に出版したほか、知床の開拓を描いた「地のはてから」で2011年に中央公論文芸賞を受賞している。執筆に当たっては、開拓民とアイヌの人々との関わりについて道内各地を歩き回り、取材を重ねた。
乃南さんは全道から集まったスタッフの歌や語りについて「若い人たちが個性を打ち出し、パフォーマーとして見せてくれる。観光としてではなく、プライドを持った生き方になっていくのではないか」と感想を述べた。また、「私たちは差別の歴史も含め、社会が多様性を含んでいるということを基本として知るべきだ」と指摘した上で、「アイヌにも和人にもいろいろな人がいる。お互いをひとくくりにしないで、一人一人を見ていきたい」と共生社会への期待を込めた。

















