安平町の少年サッカークラブ「フェリーレFC」が、中学生チームのためのフットサル版”幻の決勝戦”を開いた。チームで目標にしていたフットサルの全道U15(15歳以下)選手権大会苫小牧地区予選が、新型コロナウイルス感染拡大の影響により途中で中止になったための代わりの取り組み。3年生5人にとって中学最後の試合だけに、主将を務めた3年生の谷村佳詩乃さん(14)は「いろんな人の助けがあった。後悔なく終わることができてよかった」と語った。
苫地区予選は東胆振、日高管内の19チームが出場し、今月7日に開幕。例年なら予選はリーグ戦、決勝トーナメント(T)で栄冠を競うが、今年はコロナ禍により会場の確保が難しく予選からトーナメント制を採用。フェリーレは初戦5―0、2回戦4―2で勝利し、翌週からの決勝Tに駒を進めていた。
しかし決勝Tの3日前にサッカー協会から中止のアナウンスが届いた。情勢を踏まえてある程度予測していたものの、全道大会出場に向けて士気が高まっていたところ。2年生の鈴木悠斗さん(13)は「まだ3年生と一緒にやりたいという気持ちがあったので悔しかったし、残念」とその時の心境を吐露した。
ただ「簡単に中止で終わらせたくない」とスタッフたちが代替案を模索。「たくさんのチームが集まることは難しくても、2チームで1試合のみなら可能では」と思案。決勝Tで逆のヤマだった苫小牧のエルボノスと交渉を進め、同時に試合会場を確保した。
迎えた15日、舞台は練習で慣れ親しんだ安平小学校体育館。感染症対策を入念に行った上で、保護者ら一部の観客に公開し、「公式戦の決勝のつもりで」「感謝を伝える」を胸に決戦に挑んだ。
試合は2点を負う前半に1点を返し、反撃ムードを高めたが、後半は選手層、地力の差を見せ付けられ、結果は3―7で敗戦。それでも子どもたちの表情には充実感が漂っていた。
2得点を挙げてチームに貢献した鈴木さんは「負けたけれど、実力は出し切れた。3年生と最後に一緒にできてよかった」と晴れやか。谷村主将は最初、「私たちの健康を守るために中止にしているので参加を迷った」と言うが、「監督やコーチが私たちのために企画してくれた。試合ということで少し堅くなってしまった部分はあるが、楽しめた。いつも練習している安平小が会場だったのもよかった」と笑顔を見せた。
チームスタッフで今回の企画を発案した鳥實裕弥コーチ(27)は「試合をやることに幸せを感じる子、負けて悔しかった子、いろんな子がいて、ただそんな表情を見ることができたのも試合があったから」と振り返る。「僕の思いだけでは無理だった。チームスタッフのサポートや選手、保護者の理解とご協力があったから。全ての人が『選手のために』全力でサポートしてくれたことに感謝したい」と話していた。
この試合を最後に3年生は引退。鳥實コーチは「当たり前が当たり前じゃなくなっている時代で、より感謝を伝えることが大事。時代の変化に耐えるだけではなく、適応することがこれから重要」と子どもたちに伝えていく考えだ。

















