国立アイヌ民族博物館 収蔵資料展「イコロ」開幕 素材と技に科学で迫る

アイヌ民族関連の収蔵資料の数々を展示

 白老町の民族共生象徴空間(ウポポイ)の中核施設・国立アイヌ民族博物館(佐々木史郎館長)で1日、収蔵資料展「イコロ―資料にみる素材と技―」が開幕した。布、木材、漆、金属など素材別の6テーマでアイヌ関連資料を展示。X線CT(コンピューター断層撮影装置)などを駆使し、アイヌ民族の生活用具の素材と技に科学で迫った研究成果を紹介している。

 収蔵資料展は、同博物館の第1回テーマ展の位置付けで、アイヌ民族の衣服や生活道具などの資料展示にとどまらず、素材と製作技術にスポットを当てる内容とした。約1万点の収蔵資料の中から、7月の開館に向けて収集した新着資料を中心に約80点を紹介。資料を入れ替えながら、第1期(12月1日~来年1月24日)、第2期(来年2月2日~3月21日)、第3期(来年3月30日~5月23日)に分けて展開する。

 会場の特別展示室では、▽センカキ・アットウシ(布―木綿・樹皮)▽シキナ(ガマ)▽ニ(木材)▽ウッシ(漆)▽カニ(金属)▽カンピ(紙)―の各素材に基づく6テーマでアイヌ民族の関連資料を公開した。衣装に施した文様やイタ(盆)、マキリ(小刀)、ござといった生活用具の製作方法、内部構造についてX線CTなど科学分析装置で解明した研究成果を併せて紹介。模様入りござに使用した染料の再現資料も並べ、アイヌ民族の高度な技を伝えている。

 アイヌ民族が和人との交易で入手した多様な漆器も展示。宝物として扱われた容器シントコをCTで断層撮影したところ、上げ底の構造をしていたという分析結果も目を引く。

 装飾品のニンカリ(耳飾り)やイコロ(宝刀)といった金属資料に関しては、CTや蛍光X線分析装置を活用し、銀や銅など素材と内部構造を明らかにした調査結果を実物と共に紹介している。カンピのコーナーでは、江戸時代の絵師小玉貞良が描いたアイヌ民族の風俗画「蝦夷国風図絵」を展示。クマの首に縄を掛けた場面などを捉えた作品で、1970年代にフランスで発見されて以降、今回が国内初公開となった。登別出身のアイヌ民族でアイヌ語・文化研究の礎を築いた知里真志保(1909~61年)の直筆原稿もあり、貴重な資料を通じ知里の研究活動の一端に触れられる。

 博物館は開幕を前に11月30日、報道陣に収蔵資料展を公開。佐々木館長は「実物の資料と科学分析の結果を多くの人に見てもらい、アイヌ民族が利用した素材や製作技法への理解を深めてもらえれば」と話した。

 開館時間は午前9時から午後5時(来年3月末まで)。月曜休館。入館料はウポポイ入場料(大人1200円、高校生600円、中学生以下無料)に含む。事前予約が必要で、詳しくはホームページに掲載。

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る