この師走はクリスマスのディナーショーやコンサートがほとんどなかった。言うまでもなく感染症が理由だが、そもそも今年は舞台やホールを使う文化イベントの大半が延期や中止になった。たとえ開かれても多数の人が「不要不急の外出」と会場入りを自粛し、それを見越して中止されたものもあるだろう。
文化イベントを楽しむ機会が少なかったのは残念だが、鑑賞する側はその程度のことで済む。大変なのは歌、演技、踊りなどをなりわいとする側で、仕事の激減で生活が揺らいでいる。厳しいのは他の業種も同じだが、自分の仕事を多くの人に「不要不急」とみなされたことでは心が深く傷ついたのでは。
経済が優先されるとき、人々の心を耕し感動を与える仕事はさほど重視されないことがコロナ禍で浮かび上がった。文化の担い手たちが今後に不安を覚えても不思議はなく、それが理由とは言い切れないが、今年は複数の未来ある俳優や音楽家が自ら命を絶った。
文化は、人間らしい生活をするために欠かせない心の栄養源や潤滑油になるもの。感染症の流行で脆弱(ぜいじゃく)にならないよう、担い手は趣向を凝らして文化を発信し続け、一方で担い手やイベントを守る支援策が積極的に講じられていくことを望む。この分野の力が衰えれば、新たなことに挑む意欲や行動力が人々から薄れ、影響は目に見えない形でさまざまな分野に及ぶのだから。(林)









