コラム担当の一人として振り返れば、今年は「人の世」を考えることが多かった。本道は1月に新型コロナウイルスの最初の感染者が発表され、2月以降は平時の感覚はなくなった。コロナによってさまざまな問題が表面化し、取り上げる視点をあれこれ考えた。
「人の世」というと「智に働けば…」「住みにくい」などと連想するだろうか。感染拡大の社会は人の心の弱点が表面化した。生命を守る医療や暮らしを支える流通の担い手、その家族に対する差別的な仕打ちの例が私たちの地域でも見られた。都市では「自粛警察」の動きがあったり、不寛容と同調圧力の強さを見せ付けられたりした。働き方が変わり、収入の柱が傾き、暮らしの土台が揺らいだ人もいる。感染への恐怖、暮らしの不安が人の心を不安定にし、攻撃的にもした。半面、応援を題材にしたドラマや音楽が話題になり、共感する心に染みた。
思えば、年初の期待や展望とは懸け離れた所に行ってしまった感がある。諦め、先送りにした何かがみんなあるに違いない。新年のカウントダウンと同時に一切をリセットできる魔法などあるはずもないけれど、心を新たにすることはできる。再出発。そう心を決めるだけで踏み出せる。できる、できない、その差は紙一重ほどもない。
「大晦日さだめなき世の定めかな」。詠んだのは井原西鶴。節目を大切にしたい。来る年にささやかな期待と決意を込める。どうぞ良いお年を。(司)









