初日の出

初日の出

 白老町の虎杖浜神社が立つ丘から眺める日の出の光景は、日本一ではないかと思うほど美しい。元日の朝、海岸沿いにある丘に家族と登り、眼下に広がる海原の雲をオレンジ色に染めたご来光へ手を合わせた。未知のウイルスに翻弄(ほんろう)され続けた日々に終止符を。列島各地で昇る日の光を見詰めた人々は皆、そう祈ったのではと想像した。

 新型コロナは日常を変えただけではなく、社会的弱者をさらに窮地へ追い込んだ。中でも経済活動の停滞で非正規雇用の若者などが真っ先に失業の矢面に立たされ、たちどころに生活苦に陥った。非正規の比率が高い若い女性を中心に昨年、自ら命を絶つ人が急に増えたのはそうした背景もあるのだろう。

 警察庁のデータによれば、自殺者数は昨年7月から毎月連続して前年を上回った。格差社会もあぶり出したコロナ禍の陰で不安と孤立を深め、悲劇の選択に追い詰められる非常事態が続く。感染拡大の深刻化に伴い、メンタルをむしばまれる人がさらに増えるのが心配だ。先の見えないトンネルに放り込まれ、絶望の淵で立ちすくむ人へ手を差し伸べる施策と地域活動が今こそ必要ではないか。

 命があるだけでも幸せなことだと、「生きてる? そら結構だ」の名ぜりふを吐いたのは、故渥美清さん主演映画「男はつらいよ」の主人公・寅次郎。ロケ地となった虎杖浜神社の丘で初日の出を拝みつつ、寅さんの口ぶりをまねてみた。(下)

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