登別市の水族館・登別マリンパークニクスは、北日本海域に生息する深海魚「サケビクニン」を人工授精で繁殖させることに成功した。人工繁殖の技術を使い、同種の卵をふ化させたのは世界で初めてという。登別マリンパークは「謎の部分が多い深海魚の研究の進展につながる」と期待する。
登別マリンパークによると、昨年、登別沖の漁で混獲されたサケビクニンの雌1匹と雄2匹を使い、人工授精による繁殖に挑戦。同年9月、超音波(エコー)検査機器で判別した雄と雌に性腺刺激のホルモン剤を注射した後、卵と精子を取り出して人工授精を実施。同年12月28日にふ化に成功した。ふ化後の稚魚の大きさは全長1・35ミリで現在、施設内の予備水槽で育てている。
サケビクニンはクサウオ科の深海魚で、成熟すると全長30センチほどになる。茨城県以北の太平洋やオホーツク海などの水深100~600メートル付近に生息。深海魚という特性上、研究がほとんど進んでいない種だ。
登別マリンパークは、登別沖のエビ籠漁などで混獲され、地元漁業者から提供されたサケビクニンの通年飼育と展示を行っている。1997年には水槽内自然繁殖に成功し、公益社団法人日本動物園水族館協会(東京都)から「繁殖賞」を受賞している。
人工授精で同種を繁殖させたのは前例がなく、吉中敦史学芸員は「生殖腺エコー検査を活用した雄雌の判別や卵の成熟具合の把握などで人工授精のタイミングを的確に選定し、作業の効率を高めたことが世界で初めての成功につながった」と話す。今回の繁殖技術の確立は、「深海魚全般の研究の進展や、絶滅が心配される種の保存に生かすことができる」とし、応用の広がりに期待する。
登別マリンパーク飼育課は、人工授精で生まれた稚魚の観察を続け、「将来的に展示も考えていきたい」としている。




















