2020年の自殺者数(速報値)は2万919人で、11年ぶりに増加に転じたと厚生労働省が発表した。新型コロナウイルス感染拡大に伴う経済状況の悪化や外出自粛の影響も考えられるという。
著名人の自殺も相次いだ。インターネット上の中傷が原因とみられる人もいたが、死を選んだ理由が他人にたやすく分かるはずもない。世界保健機関(WHO)は、著名人の自殺に関する報道が「後追い自殺」を誘発しかねないとして、自殺報道ガイドラインの徹底を報道機関に求めている。報道を過度に繰り返さないことや自殺手段を明確に表現しないこと、支援策や相談先の情報を提供すること―などで、心しなければならない。
苫小牧市は「生きる」を支える自殺対策行動計画を策定している。普通の市民にもできる行動の一つとして、身近な人の悩みやつらさに気づき、話を聞いて、必要な支援につなげるゲートキーパー(命の門番)養成講座がある。受講することで誰でもなることができ、これまでに1600人余の修了者がいる。市のホームページにある「こころの体温計」は携帯電話やパソコンから利用でき、簡単な質問に答えると水槽や金魚、猫の絵でストレスや落ち込み度が表示される。これで自殺が防げるわけではもちろんないが、北海道いのちの電話011(231)4343など相談先を一つ目にするだけでも意味はある。軽重を問わず、あらゆる対策を総動員すべきときだと思う。(吉)









