アイヌ施策基本方針改定へ 10年以上経過 新法の趣旨反映-白老

アイヌ施策基本方針改定へ 10年以上経過 新法の趣旨反映-白老
白老町のイベントで古式舞踊を披露する白老アイヌ協会

 白老町は、町アイヌ施策基本方針を2021年度に改定する。アイヌ施策の総合的指針として策定から10年以上が経過し、その間に浮上した課題や国の政策の変化を踏まえて見直す。町は4月に関係団体や学識経験者で構成する検討委員会を設置し、アイヌ民族を先住民族に位置付けた新法の趣旨を反映した新たな基本方針を作り上げる。

 基本方針は、アイヌ民族と深い関わりのある白老町の政策方針を示したもので、07年度に策定。▽アイヌ民族や文化を尊重する社会の創造▽アイヌ文化の振興と伝承の推進▽民族の歴史、文化に関する教育の振興▽産業振興や生活環境の充実―などを重点施策に掲げ、事業を進めている。

 一方、策定から10年以上が経過した中で、先住民族の権利回復をうたう国連宣言(07年度)、それを踏まえて施行されたアイヌ施策推進法(19年度)、さらに白老町での文化復興発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)開設(20年度)など、アイヌ民族をめぐる環境が大きく変化。法的に初めて先住民族に位置付け、差別禁止も示した新法の趣旨も現行基本方針に反映されていないことから、町は見直しを図ることにした。

 改定には、関係団体の代表や学識経験者ら10人程度でつくる検討委員会を立ち上げ、5月以降の検討会で議論を深める。地元アイヌ協会や民族芸能保存会、アイヌ文様刺しゅうサークルなどから聴取した意見も参考に原案を固め、来年1月に新たな基本方針を決定する。

 アイヌ民族をめぐっては、インターネットの投稿で差別的発言が目立つようになり、新法でうたう差別禁止に向けた理解促進の取り組みが求められている。また、ウポポイ整備のため、白老アイヌ文化の伝承・保存を担った旧アイヌ民族博物館が18年3月に閉館したことから、活動拠点の整備を含め、地元関係団体による伝承活動を支援する必要性も強まっている。

 さらに明治以降の同化政策で失ったアイヌ民族の権利や、アイヌ文化の集大成的儀礼イオマンテ(熊の霊送り)復活などに関する調査研究も必要で、検討委員会はこれらの課題を踏まえて議論を重ねる。担当の町アイヌ総合政策課は「施策を進める上で継続的にアイヌ関係団体のほか、団体に所属していない人の意見も聴取するなど、多くのアイヌの方々の声を幅広く把握したい」としている。

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