氷の上で

氷の上で

 木曜日掲載の本紙釣り倶楽部の編集を担当している。海釣りの対象魚が減るこの季節は氷上ワカサギ釣りの最盛期。冬の風物詩として、4日付の釣り面でも紹介した。

 沼など氷の上で、寒風に吹きさらされながら魚信を待つのは正直、つらいばかりではと思っていた。ワカサギはおいしいが、店で手軽に買うことができる。生の”氷の世界”で体調を崩すリスクは小さくないなど、合理的な言い訳は幾つでも並ぶ。

 しかし釣り面の担当となれば事情は変わる。あんたがそれを言っちゃあおしまいよ―だ。ならばと腹を決めると、あれほど小さいワカサギの釣り味とはどんなものかと興味も湧く。重い腰を上げた。念入りに防寒対策をし、1月の休日、苫小牧市内西部の錦大沼に出掛けた。

 細かい作業もあって手はかじかむが、寒さに震えることはなかった。糸を垂らせば、気が魚に伝わりそうなほど集中する。魚信があれば気持ちは上がる。首尾よく釣れれば気分はいい。心中で表情は緩み、何にして食べようかと思いは先に進む。

 余裕が出ると関心は周囲に向く。黙として集中を切らさない仙人然の釣り人、飽きて走り回る幼児、シングルバーナーで湯を沸かしコーヒーをドリップするアウトドアの達人風の男。歓声と香りが漂う氷の上にはコロナの日常から解放された人々の生き生きとした表情がある。

 密を避けられる遊びがブームだ。次に行くときは隣の温泉に漬かると決めている。(司)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る