南米アルゼンチンの先住民らが進める伝統工芸の特産品作りを、遠く離れた白老町の人々がサポートしている。白老でアイヌ文化継承を意識した商品開発などに携わる関係者が、同国を対象にした国際協力機構(JICA)の一村一品プロジェクトに協力。リモートで現地の先住民へアドバイスを送るなど、伝統文化と地域の振興を図るための支援に動いている。
先住民が多く暮らすアルゼンチン北部地域は貧困率が極めて高く、対策が同国の喫緊の課題となっている。途上国などで開発援助に当たるJICAは、地域資源を価値の高い商品に変えて、経済・地域振興を図る一村一品プロジェクトの対象国にアルゼンチンを選定。先住民文化が根付く北部地域5州をターゲットに、2019年度から5年計画の支援活動に取り組んでいる。
事業を受託した一般社団法人北海道総合研究調査会(札幌市)は、先進事例としてアイヌ文化を生かした商品開発や、地域振興の取り組みが盛んな白老町に注目。同町でアイヌ手工芸品など商品の企画販売を行うBLUE SALMON(ブルーサーモン)代表の貮又聖規さん(49)らに助言の協力を求めた。
支援に当たっては昨年7月、貮又さんがオンライン会議システム「ZOOM(ズーム)」を使い、先住民族アイヌとゆかりの深い白老町の特徴や、地域資源を生かした商品開発の取り組みなどを同国の先住民らに紹介。10月には町内の大町商店街でカフェ結を営む田村尚華さんが特産品作りの参考にしてほしいと、植物から香料のエッセンシャルオイルを抽出する方法をZOOMで伝えた。
ミシオネス州やサルタ州など同国5州の先住民が伝統技術で製作した商品の課題を探るため、同調査会は今月6、7両日、現地から送られた25点を白老町観光インフォメーションセンターに展示。貮又さんも参加し、同国の野生動物ビクーニャの毛で作ったマフラー、ラマの毛の織り物など展示品の感想について来館者にアンケート調査した。今後、商品のクオリティーに磨きを掛けるため、貮又さんらは近くZOOMで現地へ再びアドバイスを送る予定だ。
JICAは23年度までのプロジェクト期間中、現地先住民の経済的自立と地域活性化につながる商品開発を目指す。担当する同調査会の神谷憲一研究員は「商品の改善点や効果的なPR方法を探り、先住民文化の継承と地域の魅力づくりを支援したい」と話す。
貮又さんも「アルゼンチンの先住民文化とアイヌ文化を掛け合わせた商品を企画するなど今後、現地の人々と一緒に多文化共生を理念にした活動も行っていきたい」と言う。




















