白老町立国保病院で医師不足の問題が急浮上している。救急医療にも対応する常勤医3人のうち、内科と外科の2人が今年度内に自主退職し、3月末時点の常勤医が1人という事態になる見通し。同病院は4月に内科医1人を採用する予定だが、それ以外に医師確保の見通しは立っておらず、医業収益の低迷は避けられない情勢だ。
■相次ぐ常勤医の退職
同病院によると、1月に内科医長が退職し、3月末には外科医が病院を去る。同病院の常勤外科医については、2013年4月から不在となり、出張医で診療に対応してきた。昨年10月にようやく常勤医を確保できたものの、再びいない状態となる。
このため、常勤医は猪原達也院長1人という事態に。4月に内科医1人の採用が決まっているものの、医師確保の難しさから当面、常勤2人体制が続く見込みだ。
同病院は内科、外科、小児科の診療科目を持ち、常勤4人を基本的な体制としている。しかし、医師の確保難から13年度以降、3人体制が続き、19年12月の内科医1人の退職でついに2人になった。昨年10月の外科医採用で3人に戻したが、相次ぐ退職でまた振り出しに戻る形に。常勤医以外にも、非常勤医2人のうち内科医1人が3月末で辞める予定で、相次ぐ医師の退職に病院側は苦慮している。
■医業収益も低迷
自己都合の退職理由はさまざまだが、常勤医の減少は救急医療や通常診療の体制的課題のほか、医業収益の低迷という経営的問題を引き起こす。常勤医2人になった19年度は、患者数の落ち込みで収入が減り、経常損失4800万円の赤字決算となった。
20年度は新型コロナ感染拡大による外出控えが受診抑制を招いたほか、医師不足で入院・通院の医業収益が上がらず、引き続きマイナス5000万円程度の赤字決算となる見通しだ。
医師不足を要因とした医業収益の低迷で、町一般会計からの繰入金は19年度で3億円超、20年度も4億円超となり、町財政を圧迫させている。医師増員の見通しが立っていない中、21年度も厳しい経営を強いられることが予想される。
病院経営の問題にとどまらず、地元4医療機関が連携し個別・集団を基本とした4月以降の新型コロナワクチン接種体制を築く上でも、医師不足が課題となる可能性がある。さらに民族共生象徴空間(ウポポイ)開業に伴う観光客の入り込み増を見込み、必要としていた常勤医増員による救急医療強化も進まない状況が続いている。
24年度開院予定の新病院の建設に向けても、医師の確保と定着が求められる中で、村上弘光事務長は「さまざまな機関に働き掛けるなど、あらゆる手段で確保に努めたい」としている。

















