次男が3歳の頃、近所の公園でけがをした。放送事業会社の役員である首相の長男が、所管官庁の総務省幹部を繰り返し接待していたとの報道を読みふと思い出した。
母親が背負って病院まで走り止血処置を受け、今は傷跡もない。お兄ちゃんたちの野球遊びに参加しようとホームベースに近づき、振られたバットが鼻付近に当たったらしい。夕方、バットを振った子が母親と訪れて「すいませんでした」。さぞ心配したに違いない。「こちらこそ」と息子の不注意をわび、けがの状態を説明した。加害、被害にかかわらず、子どもの事故の心配は親にとって終わりのないもの。親の冷静な謝罪が、きっと子どもの反省と、再発防止へのしつけになるのだろう。
国家公務員倫理規定は、利害関係者からの接待や金品の贈与を禁じている。総務省の調査では幹部10人以上が延べ40回近く長男らのもてなしを受けた。当初否定した仕事絡みの会話も認めた。10人以上が懲戒処分を受けるとみられている。国会で、背中を丸めて深々と頭を下げる官僚の姿が悲しい。「なぜ断れなかったか」。首相は元総務大臣。官房長官として長く官僚人事に関与し、結果として前首相時代に、偽証や会議録隠しの忖度(そんたく)行政をつくり上げた人なのだ。断れないか。
首相は、追及が始まった当時「別人格」と語気を強めて関わりを否定したが、22日の国会質疑では「大変申し訳なく思う」と謝罪した。手遅れかな。(水)









