暮らしを支える社会基盤として、住民が最も望むものの一つが医療機関であるのは言うまでもない。住み慣れた地域で生涯を過ごしたいと願う人にとっても必要不可欠な存在であり、安心の生活を保障する役割は高齢社会の進展でより重視されることだろう。体調を崩したときにすぐ診てもらえる病院があるかどうかを、都会からの移住先として選ぶ際のポイントとする人も多い。
だが、公的病院を中心に地域医療を担う地方の医療機関は経営難に苦しみ続けている。要因の一つは医師不足にある。必要人数を確保できなければ、当然ながら医業収益は上がらず、病院運営が困難に陥る。少ないスタッフでまちの医療を何とか維持しようと奮闘する勤務医の負担も増し、疲弊して職場を去る事例が絶えない。不足がより不足を招くという深刻な問題だ。
白老町立国保病院でもこのところ退職の動きが相次ぐ。辞める理由はさまざまだが、医師不足の顕在化に病院側は頭を悩ませる。あらゆるルートで確保に急いでいるものの、当面厳しい体制を強いられそうだ。
都会に多くいるけれど、地方には少ない。都市部に医師が偏在する傾向が強まる中、特に小さなまちの病院維持が難しい時代になった。状況を放置すれば地域医療が立ち行かなくなる恐れもある。ここは行政の本腰の対策が必要だ。地方勤務経験がキャリアアップにつながる制度をつくるなど都市部集中を是正する手立てを求めたい。(下)









