餌台

餌台

 毎日声を聞き、姿を見ている野鳥。ふと立ち止まると、驚くほどたくさんの命が、雪や風に負けず元気に飛び回っていることに気付く。

 知人のSさんの、この冬の経験。昨年の晩秋、奥さんが「野鳥の餌台を置こうか」。友人から「いろんな鳥が来るんだよ」と聞いていて、興味はあった。すぐに近くの日曜大工店で餌台を買ってきた。支柱は、釣りに出掛けた先で見つけた流木だ。近所からはいつもスズメの鳴き声が聞こえているから、彼らが最初のお客さんになるに違いない。食パンの耳などを適当に乗せて「さあいつでも来い」。

 しかし、数週間たってもスズメ1羽来ない。最初の来訪はヒヨドリだった。知人に聞くとリンゴが好物とか。置くと食べてくれた。ヒヨドリの声に安心したのか、スズメも来るようになった。窓辺で観察する人の気配を感じてサッと逃げていたが、今は逃げなくなった。ヒヨドリがこっくりこっくり昼寝するところも見た。数日前にはシメもやって来た。思えば、夫婦の、初めての共通の趣味かもしれない。「来たよ。食べてるよ」。70歳になって会話が増えた。

 孫は男児1人。首都圏に住んでいる。新型コロナウイルスの感染拡大で、帰省のめどが立たなくなってしまった。ワクチン接種にも、まだまだ時間がかかりそうだ。次に帰って来る頃には、窓から見られる野鳥の種類が、もっと多くなっているに違いない。じいじが解説をしてあげる。喜んでくれるかな。(水)

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