指針

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 大地震や洪水の警戒、最近なら新型コロナウイルス感染防止に向けた呼び掛けの、時に過剰とも思える「優しいお願い調」が気になる。

 10年前の、春の一日の午後に突然起きた大地震と巨大津波の様子が新聞やテレビで繰り返し報道されている。地震に備えること、津波から逃げること。その基本を確認しつつ、自分や家族の備えの欠落を点検する日が続く。そんな時に聞こえてくるのが「優しいお願い調」だ。

 テレビなどで防災に関する発言を続けている片田敏孝東大教授も、そうらしい。昨年秋に出版した集英社新書「人に寄り添う防災」で、行政が作る文書や呼び掛けへの違和感を書いている。「避難は『していただく』ものか」の章では、「防災は、行政が主体となって国民に『避難してください』とお願いするものなのか。行政と住民が一体となって立ち向かう課題ではないのか」と呼び掛けている。

 新型コロナウイルスの感染防止対策も似ている。マイクを向けられ「緊急事態宣言に慣れて緊迫感がない」と人ごとのように話す若者や、友人とカラオケを楽しむ行動的な高齢者の熱唱の様子がテレビに映る。新規感染者が増え第4の波の到来が心配されている。変異株による感染者が増加し、神奈川県では国内初の変異株による死者も発生した。政府は、首都圏の緊急事態宣言の延長か解除かの判断を迫られている。科学的な判断を堂々と示し、「お願い調」ではない行動指針の提示を。(水)

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