大阪府豊中市の高校に通う岩見朱莉さん(17)がアイヌ民族とマイノリティー(少数派)をテーマにした絵本制作を計画している。苫小牧市在住で障害のある女子児童がアイヌ民族についてつづった読書感想文に共感。インターネットで資金調達するクラウドファンディングを活用し、年内発行を目指している。自身も難病を抱える岩見さんは「マイノリティーの存在を知ってもらう絵本を作りたい」と言う。
岩見さんは、先天性骨形成不全症という生まれつき骨が折れやすい難病を抱えている。これまでに13回も骨折を繰り返し、そのたびに入院して手術で治療。特に幼少期はほとんど、病院のベッドの上などで過ごした。骨折を防ぐため、友達と外で駆け回ることもできず、「普通の体験ができない私の中に、多数対1人というマイノリティー意識が常にあった」と話す。
成長するにつれ、性的少数者(LGBT)などマイノリティーに対する偏見や差別の問題に関心を持つようになり、「世の中を少しでも変えたい」と思っていた。そうした中で昨年、オンライン学習指導の家庭教師から、苫小牧市の小学生でASD(自閉スペクトラム症)という障害のある女子児童の読書感想文を紹介された。
岩見さんは、アイヌ民族について多くの人に知ってもらいたい―と願いを込めた作文に共感。「この子の夢はアイヌ民族を描いた絵本を作ること。それを実現したい」と考えたという。アイヌ民族も少数者として差別、偏見の苦難の歴史を背負う先住民族。自分と同じマイノリティーという境遇に心を動かされた。
岩見さんは絵本作りを目指して早速、行動に移り、自身がオンライン学習で利用している豊中市の家庭学習支援会社「ぱんだの庭」の吉田抽香里社長(46)に相談。安平町出身で苫小牧の高校を卒業した吉田社長のサポートで昨年暮れ、絵本制作のプロジェクトチームを立ち上げた。チームは岩見さんをリーダーに苫小牧市や安平町、大阪、神戸、東京、香港などの小中学生ら10人で編成。障害のある児童もメンバーになり、ドリームキッズプロジェクトと名付けて毎月、オンライン会議を開いて絵本作りの方向性を話し合っている。
4月1日にはチームメンバーが白老町を訪れ、アイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)を見学するほか、アイヌ民族をルーツに持つ町内在住の女性を取材。絵本の中身を固めた後、6月から制作に入る。資金はクラウドファンディングで調達。英語や中国語版も作り、11月には販売を始める予定だ。新年度から高校3年生になる岩見さんは「絵本を通じてマイノリティーについて考えてもらい、さまざまな人が共生する社会の大切さを伝えたい」と意気込む。




















