晴柀さん(86) 草花写真集を制作 萩の里 自然公園 食害で危機の希少種も収録 白老

晴柀さん(86) 草花写真集を制作 萩の里 自然公園 食害で危機の希少種も収録 白老
萩の里自然公園の草花を収めた9冊目の写真集を手にする晴柀さん

 白老町の「萩の里自然公園」で草花の写真を撮り続けている同町萩野の晴柀(はれまき)武一さん(86)が、9冊目となる写真集を作った。里山の広大な自然公園に自生する46種を掲載。環境の変化や深刻なエゾシカの食害で消えつつある希少植物も収録し、「多くの人に貴重な自然をアピールし、保全につなげたい」としている。

 白老町萩野・石山地区に広がる萩の里自然公園(約200ヘクタール)は、かつて薪炭林として利用された森林。戦後、長く放置されていたが、里山再生と保全を求める地域住民の声を受け、町が1998年から10年計画で自然公園として整備。森林の手入れなどは、住民でつくる管理運営協議会が主体となって行っている。

 元白老町立萩野中学校教員の晴柀さんは、約30年前から萩野の森に通い、自生する植物の写真を撮り続けている。2003年に初の写真集「萩の里自然公園の草花」を自費で発行。以降、数年置きに制作し、今回2年ぶりに作った。

 700部印刷の最新版(220ミリ×200ミリ、48ページ)では、春のフクジュソウや夏のツリガネニンジン、秋のエゾリンドウなど季節の草花46種をオールカラーで紹介。一眼レフのデジタルカメラを手に広い園内を歩き回り、撮りためた写真の中でベストショットをパソコンで選んで本にした。

 自然公園として整備する前に、町が1995年から97年にかけて実施した環境調査では、絶滅の恐れがある種を含めて98科523種の植物が確認された。この他、ほ乳類5科9種、鳥27科67種、昆虫105科423種が記録され、多様な生態系を持つ「生物多様性保全上重要な里地里山」として環境省の認定も受けた。

 環境教育や住民の憩いの場として利用され、人の営みと自然が共存する里山として住民の手で守られてきたが、近年、エゾシカによる植物の食害が深刻化。自然公園から消えつつある草花が多くなったという。

 写真集では、白老で発見された種として知られるシラオイエンレイソウをはじめ、オオウバユリ、シラネアオイなど、食害や環境変化でほとんど見られなくなった草花も収録。管理運営協議会は食害対策の防護ネットを張って希少植物の保全に努めているが、「特にエンレイソウ種は園内でほぼ壊滅状態にある」と晴柀さんは憂える。

 オオアワダチソウやオオハンゴンソウなど、在来植物を駆逐するように分布を広げる外来種の侵入も目立ち、自然公園の植生が危機にさらされている。晴柀さんは「今ある植物を写真集に記録し、保護活動で後世につなげる大切さを呼び掛けたい」とし、米寿となる2年後には10冊目の発行を目指している。

 写真集は希望者に配布する。住所、氏名、電話番号を記入してファクス0144(83)3876か、はがき=郵便番号059―0922、白老町萩野270の90、晴柀武一さん宅=で申し込む。

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る