白老町教育委員会は、国指定史跡「白老仙台藩陣屋跡」の保存活用計画を策定した。幕末の北辺防衛拠点として道内最大級を誇る遺跡の文化財価値を高め、次代に引き継ぐための保存管理や利活用の方向性を取りまとめた。計画期間は2021~30年度の10年間とし、陣屋造営時の土塁や堀割の復元など遺跡の整備方針も示した。
1966年に国指定史跡となった陣屋跡について町教委は、第1次環境整備事業(69~95年度)で御門、土塁、堀割、太鼓橋の復元や屋敷跡の整備などを実施した。その間の84年にガイダンス施設・仙台藩白老元陣屋資料館を開設。86年には10年間の保存管理計画を策定し、整備や活用を進めた。しかし、第1次整備事業の着手から50年以上が経過した中で、遺跡の施設全体が老朽化し、改修が不可欠な状況となった。遺跡や資料館が民族共生象徴空間(ウポポイ)の関連施設に位置付けられ、利活用の促進も迫られている。
こうした中で町教委は、遺跡の整備と活用を推進する保存活用計画を新たに策定。発掘のほか、絵図、文献、地質、植生などの調査を進めながら、同計画を踏まえた24年度から10年間の第2次環境整備事業につなげる方針を立てた。
同計画は「保存管理」「活用」「整備」「運営体制」の方向性や方法を取りまとめた内容。保存管理では、土塁崩落が発生し、集中豪雨による遺構への影響も懸念される中、資料館の人員を適切に配置し点検・管理の質を高めるとした。新たな遺構が確認された範囲については、地権者の理解を得て史跡追加指定を目指すことも盛り込んだ。
活用に関しては、仙台藩による陣屋造営の経緯、白老のアイヌ民族と仙台藩士の関係性など、史跡の価値や歴史的意義の発信を強化。イベントも企画し、学びの場や観光資源としての魅力を高めるとした。整備では陣屋造成時の土塁や堀割を復元。御本陣跡、御勘定所跡、稽古屋跡、長屋跡など遺構の復元に向けた調査も進め、遺跡の全容解明につなげる。解説板の設置、遺跡に影響を与える樹木の撤去も行い、史跡全体の文化財的価値を高める方針を示した。
国の補助金を活用した第2次整備事業に関しては、歴史や建築設計などの専門家で構成する整備委員会を6月に設置し、検討を進める。資料館の武永真館長は「史跡の本質的価値をより顕在化させ、次代に継承するための整備、保存活用に取り組みたい」と言う。
白老仙台藩陣屋は幕府の命令で仙台藩が1856(安政3)年に築いた北辺防衛の軍事拠点。約35ヘクタールの史跡指定エリアにある資料館は古文書や武具など約300点を所蔵し、幕末の蝦夷地の歴史を伝えている。




















