虐待

虐待

 「犬が人をかむのはよくあること。しかし人が犬をかめばニュース」。何がニュースか。悩む新米記者への、先輩の冗談交じりの助言。

 帯広市のばんえい競馬の44歳の騎手が馬の顔を蹴った。4月18日の新馬能力検査でのこと。インターネットで画像が配信され「虐待だ」と批判を浴びた。その場面をテレビで見た。障害の山を登れずに座り込んだ馬の左顔面を、そりから降りた騎手が左足で2度、蹴った。市は批判を受けて騎手の懲戒処分を決めた。その後の調査で同じ日に58歳のきゅう務員も馬の顔を蹴ったことが分かったとして、市はきのう懲戒処分を発表。「動物愛護の観点からあってはならない」と、改めて謝罪した。

 農耕馬が農作業の主役だった時代に育った。学校のグラウンドにコースを造って山を築き、自慢の馬の力を競う「ばんば」は一大行事だった。しかし、興奮した大人が怒声とともに馬をむち打ち続けるのを見るのは苦手だった。「農耕馬には人間が怖いものだということをまず教える。たたいて、たたいて教える」。そんなしつけがあったことを聞いた記憶がある。日高管内で、軽種馬の生産者に同じようなしつけはあるかを聞いてみた。答えは「サラブレッドは繊細だから。考えられない」。

 人間の世界でも家畜やペットの世界でも、虐待の話題が絶えない。生命の尊厳とは何か。ばんえい競馬と動物愛護とは―。改めて放映された、馬を蹴る人の画像を見ながら考えた。(水)

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