ガラス越し

ガラス越し

 高齢者施設で暮らす母親との面会は常に玄関のガラス越しだ。互いに声が聞こえないから、会話の手段は、施設が用意する携帯電話。差し入れの品も直接手渡しできないため、職員にお願いする。新型コロナウイルスの感染拡大によって、触れ合う機会が奪われてから1年以上たつ。親子を分断するガラス1枚が、いつも分厚い壁のように見える。

 高齢者は感染すると重症化するリスクが高い。集団生活の施設内にウイルスが入り込めば、クラスターが起きる恐れもある。だから面会制限は致し方ないと思うけれど、入所者の心身への影響が心配になる。家族など親しい人と会えないことで気が沈んだり、張り合いを無くしたりして、認知症の発症や進行を招く懸念も指摘されている。

 高齢者施設の入所者を優先したワクチン接種が全国の自治体で順次始まり、これから本格化する。これで家族との元の日常を取り戻せるのだろうか。期待したいところだが、面会制限の解除には、まだ時間がかかるとの見方は多い。変異ウイルスが次々に登場する中、ワクチンの有効性がはっきりと分かる段階までは、施設側の警戒心も解けないからだ。

 施設の中には面会の機会を増やすため、オンラインを導入するところもある。白老町の施設でも半数が取り入れるようになり、関係団体が家族向けの機器操作講習を予定している。コロナとの闘いは長期戦。入所者の心のケアも強めたい。(下)

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