2018年9月に発生した胆振東部地震の土砂崩れで19人が犠牲になるなど、大きな被害を受けた厚真町の吉野地区被災現場で15日、植樹会が行われ、住民や遺族ら12人と町内の来賓らでシロヤマザクラの苗木を植えた。町はかつてと同様に、同地区を再び桜が咲き誇る名所にしたい考えだ。
同地区の山は震災以前、エゾヤマザクラが点在。地区名は桜の名所でもある「吉野山」(奈良県)に由来したとも言われ、「吉野桜」と呼ばれて親しまれてきた。しかし、地震による山腹崩壊で桜の木は神社や生活会館と共に押しつぶされてしまった。
これを受けて、奈良県吉野山の桜の保全活動を続ける「吉野山保勝会」が19年4月、哀悼と鎮魂の思いを込めて町に桜の苗木を寄贈。また、民間企業がインターネットで資金を調達する「クラウドファンディング」で集めた約180万円を町に寄付していた。
今回、植樹したのは吉野山保勝会から寄贈を受け、町で管理していたシロヤマザクラの苗木5本。参加者は復興への思いを込めて丁寧に植えた。震災前まであった実家が崩壊し、家族を亡くした60代の女性は「吉野はかつて桜がすごくて、そこでよく遊んでいた」と懐かしみ、「早くここをきれいにして元の吉野地区に戻ってほしい。しっかり根付いてほしいという思いを込めて植えさせてもらった」と話していた。
町は今後、民間企業から受けた寄付を活用し、吉野地区の土地管理を目的にした緑化事業計画の一環として桜の植樹を計画しているという。宮坂尚市朗町長は「いろんな人に楽しんでもらえるように整備するほか、吉野地区の歴史を振り返るような場所にしたい」と構想を語った。




















