東京オリンピック開幕まで2カ月余り。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、開催への懐疑論は強まる一方だが政府は開催ありきの姿勢を崩しておらず、菅義偉首相もロボットのように「選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていく」と繰り返すばかりだ。
どうしてそこまで「中止の検討」をかたくなに否定するのか。五輪開催を「コロナに打ち勝った証しにしたい」という気持ちに偽りはなかろうが、その成功を秋までに行われる衆院選の弾みにしたいとの思惑もあろう。「開催都市契約を基に損害賠償を請求されるのを懸念し、主催者のIOC側から中止の発信があるのを待っている」「もはや中止の準備をする時間すらなくなった」との見方もある。いずれにせよ、なし崩し的に開幕に至ってしまうのが一番怖い。医療現場が悲鳴を上げ、ワクチン接種もスムーズに進まぬ事態に改善の兆しは見えないからだ。
ネットの掲示板に「五輪が開催されても政府の手柄ではないし、中止になったからといって失態とか野党の勝利ではない」という趣旨の書き込みがあり、共感が相次いでいた。政局と絡めず、安全を最優先してほしいと願う人がいかに多いか。緊急事態宣言の期限は31日までで「その後の対応はその時点で改めて判断する」と菅首相。あと10日ほどで緊急事態は解消されるのか。(輝)









