毎日、朝から晩まで新聞やテレビで何十回となくコロナ、ウイルスという言葉を読み、聞いているのに、理解の方はなかなか進まない。
中公新書「感染症 広がり方と防ぎ方」に、ウイルスの変異の仕組みが紹介されていた。
生物が子孫をつくるとき、親の遺伝子とは少し違った変わり者(変異株)が若干、生じる。変異株の方が環境に適応するなら、その割合が増える。変化は子孫をつくるまでの時間(世代時間)が短いほど速い。人間の世代時間は約30年だが、細菌は30分以内。1個が30分で2倍になるとすると、20時間で1兆個に増え、元気に出歩いて自分をまき散らしてくれる宿主の登場に備える―。まるで意志や頭脳を持っているかのようなウイルスの変異と感染の根本の仕組みは、ごく単純なものらしい。
それに引き替え、立ち向かう人間世界の判断と行動の何という複雑怪奇。司令塔のはずの政治は、検査や医療体制強化の判断が遅れ、ワクチンの手配も後手に回った。さらに衆院の任期満了や総選挙日程、内閣支持率の動向、東京五輪やパラリンピック開催の可否の判断なども加え合わせて先送りし、最終判断を難しく複雑にするばかり。
北海道の新規感染者数がきのう、東京や大阪を抜いて全国47都道府県で最多になった。「札幌の問題」。そんな油断を突かれ、気が付けば感染は全道に広がっている。道は「最大の危機感を持って」と不要不急の外出自粛を呼び掛けるが―。(水)









