小中学校のデジタル教科書導入が2024年度にも始まるという。文科省の有識者会議が紙の教科書との併用を強調する報告書をまとめ、移行には曲折もありそうだ。
いろいろな教科の教科書をタブレット端末(薄型パソコン)などに記憶させ、呼び出して学ぶのがデジタル教科書。文字を拡大できたり音声が出たり動画を見られたり―と、教える力量は高そうだ。重くなる一方だったランドセルやかばんを軽くできることへの期待もある。一方で長時間使用の視力への悪影響の心配や、多機能が子どもの注意力を散漫にするのでは―との不安の声もある。配備費用の国と地方の分担、教員の指導能力の格差解消も大きな問題だ。
自分は年に一度、本屋さんで教科書を購入し、真新しい本と紙の手触りを味わい、インクの匂いを嗅いで育った世代。子どもは教科書無償化世代。そしてデジタル教科書の配備。時代は変わった―という感慨はある。しかし、30年以上前の日本語文書作成機(ワープロ)の草創期から、これらの機械と職業的に付き合ってきた立場。有能な機械たちの冷酷さへの警戒は忘れない。自分の不注意が原因とはいえ、原稿や大切な資料の保存や消去に際して機械の非情には何度絶望させられたことか。
移行はしたものの、子どもの身辺にはずっしり重い教科書がさらに1冊増えただけ。先生は連日、教科書の不具合や破損などの処理に追われて―。そんなことになりませんように。(水)









