地元水産業 先行き危惧 主要魚種が深刻な不漁 20年度、過去10年間で最低-白老

 白老町の漁業者による魚介類の水揚げ量が年々、減少傾向をたどっている。町の調べによると、2020年度は6609トンにとどまり、11年度以降の10年間で最も少なかった。特に主要魚種のスケトウダラと秋サケの深刻な不漁が続いている。漁獲量減少の原因は地球温暖化に伴う海の環境変化などが指摘されているが、関係者は地元水産業の先行きを危惧する。

 いぶり中央漁協(本所登別市)に所属する町内漁業者の漁獲量は、特に16年度から大きく減少している。20年度は、ここ10年間で最高量の1万6361トンを記録した14年度の4割程度に落ち込んだ。生産額も減少傾向にあり、20年度は17億8169万円と、近年で最高額を示した15年度(32億766万円)の5割強にとどまった。

 主要魚種のスケトウダラ、秋サケのいずれも16年度以降、漁獲量が低迷。20年度は、多かった年の3割程度となった。毛ガニの不漁も続いている。漁業者の収入に与える影響は大きく、町水産港湾室は「年間所得が大幅に減った漁業者もいる。魚が取れない原因は、水温など海の環境変化も背景にあるのではないか」と言う。

 同漁協白老支所職員の古俣義幸さんも「地元漁業者の6~7割が漁に関わっているスケトウダラ、秋サケの不漁続きは、漁業経営に深刻なダメージをもたらしている」と話す。海に仕掛けた漁網を食いちぎるヨシキリザメが近年増えていることも「漁獲量の減少を招いている」と言い、サメの駆除や有効活用を促進することが重要を強調する。収入の安定化に向けては、白老の海域で取り組んでいるマツカワ、ナマコ、アワビなど、市場価値の高い水産物の栽培漁業に力を入れる必要性も指摘した。

 国が5年に一度調査している漁業センサスによると、白老の漁業者戸数は18年時点で117戸。前回調査の13年に比べ4戸減り、漁業離れが進んでいることを示した。

 不漁続きは、地元水産加工業者にも打撃も与えている。白老や登別の業者でつくる胆振水産加工業協同組合は「特産品の虎杖浜たらこの生産に関しても、原料のスケトウダラが思うように確保できない状況にある。原料の仕入れ価格も高値で推移しており、水産加工業界は非常に苦しい」と話す。漁業と水産加工の高田水産(虎杖浜)を営む高田兼昭さんも「コロナ禍の中で商品の売れ行きも鈍く、このままでは業界は立ち行かなくなってしまう」と懸念し、打開策が見通せない現状に苦慮している。

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