観客

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 五輪開幕まで50日を切る中、国内では中止や再延期を求める声が日増しに強まっているように感じる。数年前に国際オリンピック委員会(IOC)委員の投票で夏季五輪の開催地に東京が選ばれたとき、こんな状況は予想だにしなかった。1964年以来、2回目の開催はアジア初。大会運営能力の高さなどが高く評価された結果で、アスリートと観客が一体となって感動を共有していく場面だけを想像していた。

 新型コロナウイルス流行は収束の気配を見せず、政府はすでに海外からの一般客を受け入れない方針を決め、国内観客数をめぐっては上限を6月中に判断する考え。菅義偉首相は無観客を回避したい意向だが、親交が深い鈴木直道知事も「五輪だけが例外というのは理解が得られにくい」とし、他のスポーツイベントの対応に準じた判断をすべきとの認識を示す。

 一部の五輪スポンサーが秋口への開幕延期を要求しているとの報道もある。しかし、観客入りを前提に延期したところで感染が収まっていなければ同じだ。感染力が強く、ワクチン効果の低下が懸念される変異株が次々と出現、置き換わっている。封じ込めるチャンスはごく初期に限られるとされ、多くの専門家が極力、密を回避する局面にあると訴える。そうした指摘、助言までを「重く受け止める」とかわし、強行してしまう政府ならば、たとえすべてが無事に終わっても国民の不信感は消えない。(輝)

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