あきれて物が言えない。白老牛の生産者は皆そう思ったのではないか。許せない、そんな声も上がる。中国の行政機関が、自国企業から出された白老牛の名称入りマークの商標申請を認めたからだ。
本物の商標マークと酷似したものを中国で勝手に登録するのは、町として黙っていられない―。白老町は昨年2月、特許権を管理する当局に承認しないよう異議を申し立てたが、結局、今年になって棄却されてしまった。次の対抗措置で商標登録の無効を訴える審判請求という手はあるものの、承認を覆す材料が乏しく、町は「勝算は見込めない」と断念した。
中国国内で白老牛の流通実績がないことなどが、異議却下の理由らしい。しかし、白老が誇る銘柄牛の名やマークが断りもなく、国家のお墨付きの下で堂々と使用されるのは、生産者にとって屈辱以外の何物でもない。白老牛を名乗った質の悪い牛肉が出回り、悪評が立てば、本家本元のブランドに被害が及ぶ。町や生産者はそれも恐れる。
中国で日本の農畜産物の銘柄を無断で商標登録し、商売に利用しようとする事例が相次ぐ。商標が認められると、同じ銘柄名の日本商品が現地で販売できなくなる。血のにじむ努力でブランドに育て上げた生産者の誇りも傷つく。日本政府は知的財産を侵害し、食の市場拡大を阻害する行為について、相手国へもっと問題提起すべきだ。不愉快極まりない”パクリ”をもう見過ごしてはならない。(下)









