他界した身内や友人の声や話し方、笑顔などはかなり長い間記憶に残り、数年どころか数十年の時間を越えて突然、夢に現れたりする。
先日、家人がスマートフォンで孫と遊んでいると脇から息子の声が聞こえた。「そうだ。じいちゃんの夢、見たよ」。「元気だった?」と家人。「ああ。元気だった」。母と子の、不思議な会話を聞きながら思った。死後約20年。義父は今も、孫の夢の中で竹刀を握っている。誠実に接すれば孫は夢の中にいつまでも招いてくれるらしい。
先日の新聞に「スマホ内 亡き人の記憶受け継ぐ」という見出しの囲み記事があった。アメリカのアップル社が、写真や動画などスマホに保存されている各種データを家族や友人が継承できる「デジタル遺産プログラム」サービスを発表した。サービスの開始日などはまだ分からないが、あらかじめ、利用者が亡くなった時の利用権(アカウント)の連絡先として家族や友人を登録しておくと、情報を引き出すことができるという。
スマホには旧型の携帯とは比べようがないほど多くのデータが入っている。家族などの写真を印刷せずにデータのままで保管し、自在に拡大して楽しんでいる人も多い。ビデオテープの時代には考えられなかった、たくさんの動画もある。まさに家族全体の共有財産だ。消滅と忘却だけがデータの末路では確かに寂し過ぎる。電話の発着信履歴が残るだけの旧型携帯派のじいちゃんには関係ないが。(水)









