届かない

届かない

 「国民の命と安全を守るのが私の責務だ。守れなくなったらやらない」と菅義偉首相は東京五輪・パラリンピック開催について述べた。

9日の国会の党首討論で、開催を契機に国内で感染が広がり、それが国民の命と健康を脅かす事態を招くということがないか、と問われ「57年前の東京五輪、高校生でした。いまだに鮮明に記憶しています。東洋の魔女と言われたバレーの選手、回転レシーブというのがありました」と話しだした。「そうしたことを子どもたちにも見てほしい」。全くかみ合っていない。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長がNHKの番組で、人気お笑いコンビ「EXIT」のりんたろー。さんと対談していた。尾身会長は「若い世代にメッセージが届かない」とずっと悩んでいたという。若者に届かないのも確かに困るが、肝心の首相に届かないのはもっと困る。

 北海道の聖火リレーは無観客の点火セレモニーだけとなった。選ばれていたランナーは言うまでもなく、胆振東部地震から復興してきたまちを見てもらいたかったという3町も残念だったろう。緊急事態宣言が20日の期限で解除されれば人の流れは間違いなく増える。2~3週間後に再拡大すれば五輪直前に感染者は急増する。制限に制限を重ね、「おもてなし」をGPS(全地球測位システム)による行動管理に変えてまで開催するなら、せめて真正面から納得のいく答えを聞きたい。(吉)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る