遠い昔。東京の明治大学商学部の入試会場。国語の問題であの詩が登場して驚いた。〈長い長い坂を登って うしろを見てごらん 誰もいないだろう 長い長い坂をおりて うしろを見てごらん 皆が上で 手を振るさ〉。日本のシンガー・ソングライターの草分け的存在、吉田拓郎さんの代表曲「イメージの詩(うた)」。1975年春の出来事だった。
そんな青春時代を思い出したのは、一昨日の日曜日に札幌のシネコンでアニメ映画「漁港の肉子ちゃん」を見たからだ。明石家さんまさんが企画・プロデュースした作品。主題歌に、若き日のさんまさんが「生き方が変わった」という最愛の曲「イメージの詩」が使われる。
しかも歌っているのが、10歳の女の子。稲垣来泉(くるみ)ちゃんが〈悲しい涙を流している人は きれいなものでしょうね 涙をこらえて笑っている人は きれいなものでしょうね〉と熱唱。さんまさんの「ボブ・ディランのように」という難しいリクエストにも応え、あの長い詩の大人の歌を淡々と少女が歌い上げる。「あの曲を女性に歌わせたい。それも10歳の子どもに…」。さんまさんのアイデアだが、見事にはまった。
拓郎さんは、この歌を聴いて涙したという。さんまさんも「拓郎さんが感動で泣いたと聞き、この作品を映画として作った意味があったと思う」と語る。あの曲が誕生して半世紀余り。これからの新しい世代により、名曲がよみがえった。(広)









