自分たちが社会的事象のど真ん中に存在していたことを1990年の芦原すなおさんの小説「青春デンデケデケデケ」に、教えられた。
小説は、四国・観音寺市を舞台に4人の男子高校生が進学や就職で別れ別れになるまでの数年間、エレキギターを中心に繰り広げる物語。ラジオから流れたベンチャーズの「パイプライン」の中の音「デケデケデケデケ」から物語が始まる。同じ時代、北海道の山あいの男子高校生も「パイプライン」を聞き、プラスチックの下敷きの端を3角形に切ってピックというものを作り、ネックの曲がった安いクラシックギターを抱え似た音を出すための苦心を始めた。
ビートルズの「ジャーン」は和音が難し過ぎた。デケデケは何とかなりそうだったが、人さまに聞いていただく水準は遠かった。雑誌を見てギターの名前を覚え値段に驚いた。18日に亡くなった「エレキの神様」寺内タケシさんの「レッツ・ゴー『運命』」を真似てみたが指も手首も、まったくついていけなかった。やがてフォークに重心が移ったのは反戦意識より、フォークギターの方が安かったからかもしれない。戦争の悲惨や、出征した兵士、残された恋人のつらさを想像する時間が長くなった。これも時の流れだろう。
長男が中学生になった頃、デケデケを弾いてみせた。自分の世代の伝統芸能。壁には今でもフォークとエレキのギターが2本。納戸には入れない。いつか弦を張り替えデケデケー。(水)









