白老町は今年度、町アイヌ施策基本方針を改定する。アイヌ民族の尊厳を回復し、白老アイヌ文化を後世に引き継ぐ総合的指針の策定から10年以上が経過し、その間に浮上した課題や国の政策の変化を踏まえて見直す。29日には関係団体や学識経験者などで構成する検討委員会を設置。アイヌ民族を先住民族に位置付けた新法の趣旨を反映した新たな基本方針を来年1月に策定する。
基本方針は、アイヌ民族と深い関わりのある白老町が全国の自治体に先駆けて2007年度に策定。▽アイヌ民族や文化を尊重する社会の創造▽アイヌ文化の振興と伝承の推進▽民族の歴史、文化に関する教育の振興▽産業振興や生活環境の充実―などを重点施策に掲げている。
一方、先住民族の権利回復をうたう国連宣言(07年度)を機に作られたアイヌ施策推進法(19年度)、さらに白老町での文化復興発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)開設(20年度)など、アイヌ民族をめぐる政策的環境が大きく変化。法的に初めて先住民族に位置付け、差別禁止も示したアイヌ施策推進法の趣旨が現行基本方針に反映されておらず、体系的な事業計画も整備されていないことから、町は見直しを図ることにした。
改定に向けて町は29日、民族学の研究者やアイヌ関係団体をはじめ、商工会、観光協会、青年会議所、仙台藩白老元陣屋資料館など各団体の代表や関係者ら12人で構成する検討委を設置。白老コミュニティセンターで初会合を開き、竹田敏雄副町長が委員に委嘱状を手渡した。会合では担当者が現行基本方針の内容や課題を説明。委員からは「言語は民族の魂。アイヌ語の研究や学べる環境を支える施策が必要だ」といった意見が出た。
町は今後、地元アイヌ協会や民族芸能保存会、アイヌ文様刺しゅうサークル、町民など各方面から聴取した意見を参考に素案を固め、検討委の議論を踏まえて来年1月に新たな基本方針を決定する。
アイヌ民族をめぐっては、インターネットの投稿で差別的発言が目立つようになり、新法でうたう差別禁止に向けた理解促進の取り組みが求められている。また、ウポポイ整備のため、白老アイヌ文化の伝承・保存を担った旧アイヌ民族博物館が18年3月に閉館したことから、活動拠点の整備を含め、地元関係団体による伝承活動を支援する必要性も強まっている。
さらに明治以降の同化政策で失ったアイヌ民族の権利や、アイヌ文化の集大成的儀礼イオマンテ(熊の霊送り)復活などに関する調査研究も必要で、検討委員会はこれらの課題を踏まえて基本方針見直しの議論を重ねる。
検討委員会の委員は次の通り(敬称略)。
▽岡田路明(北洋大客員教授)=委員長=、山丸和幸(白老アイヌ協会理事長)、中村政信(白老モシリ理事)、飯島宏之(白老民族芸能保存会理事)、八幡巴絵(アイヌ民族文化財団学芸主査)、大須賀るえ子(白老楽しく・やさしいアイヌ語教室主宰)、中谷通恵(NPO法人お助けネット代表)、砂原弘幸(町商工会青年部長)、千葉勝宏(白老観光協会事務局長)、笠井雄太郎(白老青年会議所理事長)、林啓介(WakuWakuしらおい代表)武永真(仙台藩白老元陣屋資料館長)。

















