子どもの頃、おばさんやおばあさんの世代の使っていた言葉に「ほまち」がある。石垣福雄著「北海道方言辞典」によると内密の収入や蓄えのこと。つまりへそくり。
東北や栃木、長野の言葉らしい。辞典には北海道来住者の出身県別の表が紹介されている。1922(大正11)年までの移住者の数は青森県を筆頭に、新潟県、秋田県、石川県が4万人台。岩手県が3万人台、山形県が2万人台でこれに続く。先住のアイヌ民族が地形などを基に命名した土地で、それぞれの出身地の言葉を使い、時に混ぜ合って出来上がったのが北海道弁だ。テレビなどで共通語が普及し生の北海道弁の懐かしい響きを聞く機会は減っているが、それでも何かの事象に合わせてふと心の奥から聞こえてくる。
地方への新型コロナウイルスワクチンの供給量が急きょ削減されるようだ。増減のどさくさに巻き込まれて接種予約の受け付けを停止した自治体もある。出だしの遅れを自治体のせいにして「1日百万人ずつでも接種を」と勇ましい号令を掛けた政府の、女房のやりくりに難癖を付ける亭主のような豹変(ひょうへん)。「自治体が在庫しているから」という政府のほまち扱いに「はしごを外された」と地方の不満が募る。金融機関や酒屋さんに、飲食店への圧力を要請したものの、与党も含めての不評に慌てて撤回をしたり、政府の方針の揺れが続く。かちゃっぺない政治や政府との付き合いはゆるくないのだ。(水)









