約26万人が足を運んだという。白老町のアイヌ文化発信拠点・民族共生象徴空間(ウポポイ)が昨年7月12日に開業して以降、これまでの1年間に入場した人数だ。政府が目標に掲げた100万人をかなり下回ったけれど、状況はコロナ禍。運営者側は何も焦る必要はない。アイヌ文化の多様性を伝え、理解と関心を深めた人を増やしたことは大きな成果と受け止めたい。
小中学校や高校の修学旅行生も1年間で全国から約6万人が訪れた。アイヌ文化に初めて触れた児童生徒は少なくなく、その奥深さを心に刻んだことだろう。今年も続々と学校から見学予約が寄せられており、ウポポイが子供たちの教育施設としての存在感を高めている。
近代的な建物で最新映像装置を駆使したアイヌの歌や踊りを繰り広げ、夜は派手な光と音のプロジェクションマッピングショーも。楽しんでもらいながら先住民族文化を紹介する試みは、悪くはない。継承を担う若い職員らもプログラムを作り上げる過程でアイヌの精神を学んでいる。だが、伝える本質的な意味が、見る者に共有されているだろうか。国の同化政策で伝統の営みのみならず、民族の血を引く者としての自尊心も奪われた苦難の歴史を国民に理解してもらい、誇りの回復を目指すことがウポポイの役目のはずだ。文化の発信や研究も、そうしたメッセージを含むものであってほしい。開業2年目に入った施設のこれからに期待したい。(下)









