千歳市のキウス周堤墓群をはじめ17遺跡で構成される「北海道・北東北の縄文遺跡群」の世界文化遺産登録が正式に決まった。国連教育科学文化機関(ユネスコ)への推薦が、何度も見送りになった不遇の時期もあっただけに、関係者の喜びもひとしおだろう。長年にわたり遺跡などを良好な状態に保ち、機運の醸成に努めてきた尽力に、敬意を表したい。
キウスは縄文時代後期の集団墓。周堤墓の名が示す通り、土がまるでドーナツ状の堤に積み上げられており、同市もホームページで「縄文時代のお墓が現在の地表面で見ることができるまれな例」とアピールする。墓は全部で9基、最大で直径83メートルと、その雄大さは世界遺産にふさわしい。
一方、キウス周辺には、今回の縄文遺跡群に入らなかったが、学術的にも貴重な縄文時代の遺跡が多い。苫小牧の静川遺跡、千歳の丸子山遺跡、恵庭の島松沢8遺跡は、国内3例のみの環壕(かんごう)遺構。恵庭のカリンバ遺跡は、朱色のくしや耳飾りなど、おしゃれな装身具が有名だ。
ただ、遺跡を保存し、さらに生かす活動は、容易ではない。周辺の整備が進まず、見学には不向きな環境で、活用とは程遠い遺跡もある。周辺の開発や安全対策との兼ね合いで、保存は文書やデジタル上にとどめ、すでに取り崩された遺跡もある。きっと取り組み次第で、世界遺産になった遺跡も多いはず。改めて注目したい。(金)









