30年ほど前に苫小牧の宿泊施設休憩室で目にした出来事は印象深い。本州から合宿に来ていた高校アイスホッケー部員が次々と人名を挙げ「あったぞ」と大はしゃぎした。
王子製紙チームの現役部員・OBの姓名だった。当時はまだ、個人名を載せた分厚い電話帳が公衆電話傍らにあった頃。その高校生がページを真剣に繰りつつ、有名な選手、五輪や世界選手権出場の元プレーヤーらの名を見つけ出すたび、仲間たちが「おおっ」と歓声を上げて喜びを分かち合った。電話帳一冊使った旅先での「遊び」とはいえ、生徒たちが向けた関心の大きさや無邪気さに好感し、市民としてうれしくさえ思った。
競技者の聖地、苫小牧では4日にスタートした第16回全国高校選抜大会がたけなわだ。総務省と文部科学省が推進した「スポーツ拠点づくり推進事業」として2006年に創始した夏の高校日本一決定戦で異名は「氷上の甲子園」。昨年来の新型コロナウイルス大流行の影響で1年見送り後の開催となった。
無観客開催とあって、涼しいリンクで熱戦観賞はできないものの、ネット中継があるというから我慢する。大変な状況の中、心の炎を燃やす青春盛りの十代選手にエールを送る。
きょうは広島原爆忌。日本の国民が強く平和を求めるきっかけとなった日だ。日程の終盤を迎えた東京五輪に多数来訪中の外国選手や役員のうち、歴史に思いを致してくれる人がいたなら、心から黙礼したい。(谷)









