お盆

お盆

 お盆が終われば秋―。そんなふうに夏の終わりを受け入れてきた道産子が驚く突然の低温。今朝も「寒くない?」で、会話が始まった。

 「親の年を思えば、もういつでも会えるというわけではないんです―」。五輪特別連休の大都市の駅で、テレビ取材のマイクに向かって、帰省する意味を説明する50歳前後と思われる男性の言葉。分かる気がした。

 自分は、両親も義父母も他界した。懐かしい家も学びやももうない。仏壇の写真に心の中で声を掛けて手を合わせれば、毎日でも、帰省を済ませた気持ちになれる。しかし若い頃は、ただただ無性に帰りたかった。

 この性分は遺伝するものらしい。2人の息子に仕送りをしていた当時、2人とも「帰りたがり」だった。高校生の頃と同じように、テレビの近くの長椅子で昼寝と夜更かしを繰り返すだけなのに。子どもの油断しきった寝顔や、何の夢を見ているのか、眉間にしわを寄せた険しい表情を見ながら親も短い帰省の季節を楽しく過ごしていた。

 新型コロナウイルスの感染拡大が、盆や正月の文化も破壊して2度目の夏が過ぎていく。感染の機会を減らすための不要不急の外出自粛の呼び掛けが、盆と正月の時期には「都道府県をまたいでの往来の自粛を」と、帰省の移動も対象に含めて意味が強まる。検査やワクチン接種に最大限の注意をしたい。命を守り合いたい。来年の夏には声援付きの甲子園も復活しているはず―と想像しながら。(水)

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