東京の新型コロナウイルスの感染状況に危機感を募らせた専門家が「制御不能な状況」の言葉を口にした。12日に開かれた、都内の感染状況や医療提供体制を分析するモニタリング会議での新規陽性者数の急増を踏まえての発言。国立感染症センターの代表は「災害レベルで感染が猛威を振るう非常事態」との認識だ。専門家をしてそう言わしめる深刻さにおののく。新規感染者が連日、数千人出れば重症者数も時間差で日々、最多を更新する。東京に4度目の緊急事態宣言が発せられたのは7月12日。感染拡大は全国的だ。五輪、盆休みと人の流れが一定程度あった。増え続けて不思議はない。宣言の対象地域が追加され期間も再延長となるが、先は見通せない。
専門家が「制御不能」と断じる状況に至ってなおそれに応じた手を打てない政府は思考停止状態と同じ。東京都医師会の会長は全国に緊急事態宣言をと提案した。国レベルにして危機感の共有を図れ、との思いか。感染力が強いインド由来のデルタ株がまん延し、過去最多の感染拡大に歯止めがかからない状況を見れば、従来株の延長にある予防の在り方や濃厚接触などの枠組み、医療体制の見直しも必要だった。都市部では依然、希望者がワクチン接種の予約を取れない状況が続いている。
型通りの「安全、安心」を言い続けていては正しいメッセージは伝わらない。危機感とともに第5波に応じた行動変容の在り方を示してほしい。(司)









