白老町虎杖浜の海岸通りで、「歩いて巡る屋外写真展・虎杖浜/アヨロ」が催されている。昭和30~40年代の虎杖浜を捉えた巨大写真を通りに並ぶ建物の壁面に飾り、漁師まちとして栄えた当時の風景をよみがえらせるイベント。会場に足を運んだ人々は、作品を鑑賞しながら懐かしい時代を思い返している。
27日にスタートした屋外写真展の主催者は、白老町民やアーティストでつくるウイマム文化芸術プロジェクト実行委員会と文化庁。海産物ロードとも呼ばれる海岸通りにある元水産加工場、コンテナ倉庫、民家の車庫、空き家、空き店舗などの壁15カ所に、拡大印刷した写真約20点を貼り付ける手法で展示した。廃虚となって崩れ掛けている建物にも飾り付け、過ぎ去った時代を懐かしむ雰囲気を演出。縦と横の長さが8メートル前後あり、遠くからも目を引く巨大な写真も掲げて、海岸通り全体を作品化した。
スケトウダラのすき身作りに精を出す女性、水揚げされた魚を籠で運ぶ人々、荒れる海から戻った漁船をロープで浜へ引き上げる漁師―など、海と共に生きた人々の営みを記録した写真が並ぶ。いずれも王子製紙苫小牧工場カメラ会に所属していた山崎壽昭(としあき)氏(1927~2015年)の作品。昭和中期に虎杖浜へ足しげく通って撮影し、貴重なネガフィルムを大量に残した。
半世紀以上前の光景を海岸通りに出現させた写真展は話題となり、開幕以降、鑑賞に訪れる人は絶えない。安平町の男性(50)は「地域の人々がつながり、生き生きと暮らした時代を思い出す」と話し、伊達市の河原文博さん(63)は「写真はノスタルジックなまちの雰囲気によく合う。遠い過去の記憶がよみがえってくるようだ」と作品に目を細めた。
地域住民も関心を寄せる。虎杖浜で生まれ育ち、漁師として生きた渡辺正太郎さん(84)は「海岸浸食で失われてしまったけれど、昔は前浜が広がり、そこから船を出した。浜や海岸通りが漁業で活気に満ちていた日々が懐かしい」と話した。
写真展は10月11日まで。虎杖浜の観音寺にも、山崎氏が残した写真のプリント約60点を展示している。実行委員会は「車で来場する場合は必ず駐車場に止め、マスクを着用し、密を避けて歩きながら鑑賞してほしい」と呼び掛けている。観覧は無料。無料駐車場の場所など詳しくはウイマム文化芸術プロジェクトのホームページに載せている。






















