赤ちゃんが「ニーッ」と笑ってくれたように見えるのは気のせい。近付いて来る顔を、授乳などの時に優しく声を掛けてくれる母親の顔や目と勘違いしているだけ―。
そう言ってしまえば味も素っ気もないのだが、それにしてもあの笑顔はうれしい。子どもを育て、孫の乳児時代を見てきたのだから、もう慣れっこのはずなのにますますかわいいと思うのはなぜか。近所で久しぶりに孫が誕生した。先日、初めての実家来訪の時に、笑顔のお裾分けがあった。母親に抱かれた赤ちゃんが初対面の白髪頭の当方を見てかすかに「ニーッ」。思わず頬や手に触りたくなったが時節柄、慌てて手を止めた。
先日の本紙5面に「#赤ちゃんに触らないで」という見出しの囲み記事があった。生後11カ月の男児を育てている母親が、「外出時に断りもなく赤ちゃんに触ってくる人がいます。感染のリスクもあるのでやめてほしい」と短文投稿サイトに書き込んだ。7000回以上転載され「マスクをせずに顔を近付けられた」「赤ちゃんの手を握られた」などの書き込みもあった。触るのは高齢者のことが多く、「かわいいと言われるのはうれしいが感染が怖い」そうだ。
「触る時は許可を得るのがマナー」との医師の苦言で記事は終わった。スーパーなどで「かわいい赤ちゃんと目が合って困る」という知人がいる。そんな時は遠くから「バーッ」とあやして我慢するとか。いつまで続くかコロナ禍。もう9月。(水)









