出過ぎ

出過ぎ

 ザ・ローリングストーンズのドラマー、チャーリー・ワッツさんが8月24日、80歳で亡くなった。バンド結成翌年の1963年から活動してきた寡黙な仕事人。派手なボーカリストのミック・ジャガーさんやギタリストのキース・リチャーズさんとは対照的な存在で、持ち場で静かに輝く人だった。シンプルなドラムセットを愛し、常にバンドとしてのベストサウンドを追求。「岩のように安定した」(ビートルズ元メンバーのポール・マッカートニーさん)ジャズ寄りの演奏法で、詰め込んだり出過ぎたりせずスタイリッシュに自らの音を削った。間違いなくバンドの要。58年間、1度もコンサートを欠席することがなかったという。ファンなら皆同じ気持ちだろうが、亡くなったことを思い出すたびに一つの時代が終わったような気持ちになる。

 さて、「新型コロナウイルスの感染拡大を招いたこれまでの取り組みの結果をどのように自己評価するか」との報道機関からの問い掛けに「自己評価することはせんえつだ」と述べたのは菅義偉首相。総理大臣が自らの取り組みを評価することが、どうして出過ぎたことなのか。仕事の目標をどれだけ達成できたかをきちんと確かめ、課題や改善策を明らかにするには反省や総括が欠かせない。

 裏方に徹する美学もあるが、一国の宰相には政治の声を届けるため、もっと前に出てほしい。政治空白を生む衆院選が行われる前に。(輝)

関連記事

最新記事

ランキング

一覧を見る

紙面ビューワー

紙面ビューワー画面

レッドイーグルス

一覧を見る