叱声

叱声

 テレビを1日に何時間見るか―。子どもの頃、そんな統計がまとまるたび「勉強もしないでテレビばっかり見て」と、叱られた世代だ。

 以前の新聞に「テレビを見る人減少」という記事があった。NHK放送文化研究所が5年ごとに行っている国民生活時間調査によると、1日にテレビを見る人の割合が1960年に調査を開始して以来初めて80%を割り込んだという。前回2015年調査では85%。これが79%に減った。16~19歳ではもっと減少幅が大きく、前回の71%が47%になった。この年代はインターネット利用の増加が著しく、約80%と突出している。テレビの普及期、まだテレビのない世帯の子どもたちが「知人宅にテレビを見に行く」という風習があった。あの頃を知る世代にとって、減少は大変な驚きだ。

 それにしても今年はテレビの視聴時間が長い。東京五輪が賛否渦巻く中で開かれ、夏の甲子園大会が続き、そして東京パラリンピックは、いよいよあす閉会式。きのう正午前、民放の報道番組を見ていると、軽やかな速報のチャイム。画面に「菅首相、総裁選不出馬を表明」の文字。慌ててNHKに切り替え、以来夕刊で事実を確認しながらテレビ漬けの時間が続いた。

 政治もスポーツもテレビに消費されていると改めて教えられる。パラリンピック最終盤の日程で埋まった朝刊の番組表からは、きのうの騒乱の名残を探すのも難しい。「テレビばっかり見て」。叱声が聞こえる。(水)

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