白老町の森の中にある旧飛生小学校で先日、著名な美術作家奈良美智さんがDJを務める野外音楽を楽しんだ。廃校の木造校舎で芸術活動に取り組む飛生アートコミュニティーが企画した芸術祭プログラムだ。グラウンドの芝生の上で両足を伸ばして座り込み、奈良さん選曲のフォークやロックにじっくりと聞き入った。初秋の森に流れる懐かしい楽曲。コロナ禍で重くなっていた心がすっと晴れた気がした。
緊急事態宣言下のイベントは、なぜこの時期に―という批判めいた目も向けられたことだろう。だが、主催者は長年続けてきた芸術祭の開催を諦めなかった。入場人数をぐっと絞り込んだり、思い切りプログラムを縮小したりして感染対策を徹底した。白老町から発信する芸術文化の灯を消したくない。口にしないまでも、関係者のそうした強い思いが伝わる催しだった。
コロナの影響で舞台や展示など多くの文化活動が中止を余儀なくされている。感染拡大の現状では、人を集める興行がリスクと捉えられているためだ。理屈は分かるが、アーティストはリアルな場にこだわる。誰もが未曽有の困難と不安に見舞われているからこそ、芸術文化と直接触れ合い、疲弊した心を癒やしてほしいとの願いからだ。命と演劇のどちらが大事か。そんな迫られ方に苦悩しつつ、ウイルスとの過酷な戦いを続けるアーティスト。安らぎと希望を与えてくれる活動は今の社会により不可欠だ。応援したい。(下)









