新聞のおくやみ欄に朝夕、必ず目を通す。明るい声と笑顔しか記憶にない元気な知人の名を見つけて驚くこともあり無沙汰を後悔する。
故人と自分の年齢を比べたりしながら「まだ早い。若いのに―」と考える時の基準は、うろ覚えの「平均寿命」だ。先日も新聞の切り抜きから「平均寿命 過去最長更新」の記事を探し出し改めて数字を確かめた。
厚生労働省が発表した簡易生命表によると2020年の日本人の平均寿命は女性87・74歳、男性81・64歳。共に過去最高を更新したそうだ。寿命が延びたのはそれぞれ9年連続だ。前年からの延びは女性が0・30歳、男性は0・22歳。男性は世界2位。女性は6年ぶりに世界1位に返り咲いた。寿命に関する統計の不思議は、読むだけで年齢も世界の順位も、何となく自分の到達点と思えるところか。
ごく身近な統計調査を行ってみた。父は80歳で病死した。おくやみ欄の愛読者で、百歳を目指していたのではと思われる母は「ありがとう」を繰り返しながら97歳で、食が細くなって間もなく逝った。義母は58歳、脳出血で急死した。「もうすぐ年金が出るよ。孫に何か買って、旅行にでも行こう」と娘に話していたのに、計画はごくわずかの一時金を残して消えた。義父は独居生活を頑張り通したが、がんに負けた。74歳だった。
もうじき秋の彼岸。亡くなった親や友人、知人の無念は想像できるものの、雑な統計では自分の余命は見えにくい。(水)









