菅義偉首相の後継を選ぶ自民党総裁選(17日告示、29日投開票)をめぐる報道が過熱している。選挙に出馬表明しているのは、岸田文雄前政調会長(64)と高市早苗前総務相(60)、河野太郎規制改革担当相(58)の3人。石破茂元幹事長(64)、野田聖子幹事長代行(61)の名前も上がるが、正式表明までには至っていない。
過熱報道は、前回1年前の菅政権誕生時とは党内情勢が大きく変わっているためだ。安倍前首相が病気を理由に突然辞任し、昨年9月に行われた総裁選は、細田派や麻生派、二階派など主要派閥がこぞって菅氏を支持し、岸田、石破両氏に圧倒的な差を付け、菅氏を新総裁に押し上げた。ただ、今回は前回のような派閥主導型とはいかず、同じ派閥の中でも、それぞれ違う候補者を支援する動きが見られるなど、総裁選びが混迷の度を深めている。そこには次期総選挙を勝ち抜くための「党の顔」へのこだわりや新政権発足後の閣僚や党の重要ポスト狙いといった思惑が見え隠れする。
原子力政策や女系天皇継承、「モリカケ・桜」問題への対応など有力3氏にも過去の発言とのぶれも指摘されている。中には朝三暮四とも受け止められるものもあり、聞く方はあきれ返るばかりだ。
長期に及んだ安倍・菅政権は、その隠ぺい体質と説明不足が政治への不信感を招いた。新総裁には強い指導力はもとより、国民と向き合う真摯(しんし)な姿勢が何より求められる。(教)









